2021年3月7日日曜日

minneへの出品は趣味の世界

 久しぶりにminneに出品をした。「不織布マスク風の布マスク」である。
 不織布マスク不足の去年、布マスクを作って出品することには抵抗があり、販売せずにいたが、今はもう不織布マスクが以前と変わらない値段で店に並ぶようになったので、自分の中でゴーサインが出た。なぜわざわざ需要がなくなってから出品するのかと我ながら思う。minneはいちおう小遣い稼ぎのためにやっているのだが、自分でも感心するくらい商売が下手だとしみじみ思う。ファルマンにもあきれられたので、「俺はマスクを売るんじゃない、理念を売るんだ」とうそぶいた。そして商品の説明文で、去年からのマスク狂騒について、思いの丈を書き連ねた。これまでの商品では、minne文法というか、minne世界観というか、そういうものに沿った、おもねった文章をつけていたけれど、そう媚びたところで僕の作ったものがそうそう売れるわけではないし、それならばもう自己表現のほうに舵を切って、書きたいことを書きたいように書くことにしよう、と開き直ったのだった。「実際のあなたのことを知っている人なら分かってくれるかもしれないけど、知らない人は、絶対にこんな面倒臭そうな人からマスクなんか買いたいと思わないよ」とファルマンはいった。僕もそう思う。
 面倒臭そうな人ついでに、トップ画像に合成した惹句として、「新型コロナウイルス対策への意識が高いことで知られる島根県で作りました。」というフレーズをはじめは構想していた。46道府県で唯一、都と国に楯突いたあの島根県ですよ、という意味である。県知事が聖火リレーの中止を検討したことと、僕のマスクには実際はなんの関係もないが、まあなんとなく東京で作ったマスクよりも島根県で作ったマスクのほうが穢れてないように思う人もいて、耳目を集めるのではないかと思った。意外と貪欲な商売っ気もあるのだ。しかし出品する段になって、minneのマスク販売規定に、「特定の病名やウイルス菌の表示や、それらに対する効果・効能等の表記は避ける」というのがあることを知り、泣く泣く前半部を削り、「島根県で作りました」のみにした。これだけではこちらの真意にたどり着いてくれる人はあまりいそうにない。たぶん島根県知事の一連の問題提起も、すぐに風化してしまうのだろうし。これならば「出雲大社のお膝元で作りました」のほうがよかったかもしれない。ウイルス対策が神頼みじゃダメだろうとも思うが、そんなこといったらアマビエはどないやねん、という話だ。
 出品して2日ほどが経つが、購入もなければ「いいね」もない。凪いでいる。まあこれは仕方ない。もう世の中、布マスクのバブルは弾けたのだ。弾けたから参戦したのだし。家賃が掛かるわけじゃなし、売れたらそれこそ儲けものという感じで、趣味に生きようと思う。今回、minne文法ではない説明文を書いたら気持ちがよかったので、これから出品するものは全てああいう感じの、理屈っぽくて、面倒臭そうな人っぽい、すなわち僕本来の文を添えることにしようと思った。売るのは作品ではなく、理念だ。