2020年11月9日月曜日

百年後の君へ

 時事的なことをブログに書くことに意味があるのかないのか、いまだに結論は出ないのだけど、百年後にこのブログを読んでいる読者諸君に、どうしてもこれだけは伝えておきたい、ということがあるので記しておく。このたびのアメリカの大統領選挙についてである。
 おそらく百年後にも残存している事実としては、現職の共和党候補トランプに民主党候補のバイデンが勝利した、という程度のものだろう。そしてバイデンがこれからどんな政治を行なっていくのかは、読者諸君は検索さえすれば知ることができるが、2020年11月現在の僕は知らない。僕が知っているのは、これまでの大統領だったドナルド・トランプのことだけである。つまり僕が伝えたいのも、彼についてのことだ。
 ドナルド・トランプは、初めての政治家経験がアメリカ大統領という、にわかには信じられない設定のアメリカ大統領である。ちなみに僕は政治にも経済にも明るくないので、彼の4年間の働きが良かったのか悪かったのか、言及することはできない。おそらく百年後の世界でも、百年前の4年間アメリカ大統領をした人の働きなどというものは、歳月の中に埋没してしまったことだろうと思う。試しに今wikipediaで、1920年にアメリカ大統領だった人ということで、ウォレン・ハーディングという、第29代アメリカ大統領のページをざっと眺めたのだけど、その功罪について百年後の僕は判断のしようがなかった。それと同じように君たちにとっても、遠い昔の人物、ドナルド・トランプという大統領の質感は得づらいに違いない。
 だからきっと、百年後の未来では、「第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプ」などという呼び名よりも、「Y.M.C.A.のトランプ人形」といったほうが話が早いと思う。そうなのだ。当世、これまで大統領だったドナルド・トランプとは、あのトランプ人形のトランプなのである。百年後にはもうすっかり民芸品のようになってしまったが、スイッチを押すと「Y.M.C.A.」のメロディが流れ、それに合わせて金髪で恰幅のいい、ザ・アメリカ人みたいな男が、持ち上げているとも持ち上げていないともいえない微妙な高さの左右の拳を、交互に前後に出したり引いたりするあの謎ダンスを踊る、あの人形。おばあちゃん家とか、流行っていない商店街のおもちゃ屋とかに行くとけっこうな高確率で遭遇する、あの人形のモデルこそがドナルド・トランプである。ちなみにあのダンスは、今回の大統領選挙の集会の際などに披露されたもので、そこから話題となり、世界的大ヒット商品となったあの人形が製作された、という所以がある。
 百年というインターバルを挟んで読む日記には、その肌感覚において様々な障壁があるが(それゆえにいい面ももちろんあるわけだが)、今回紹介したこのエピソードにより、少しは身近なものに感じてもらえたら幸いだと思う。