2020年10月15日木曜日

地獄短歌十首 その1

  
 目覚めれば白い着物を身に纏い着物はたぶん七五三ぶり

 三角のあれが視界を塞ぐので持ち上げたらば目の前は川

 天国と地獄があれば地獄だと思っていたがまさかあるとは

 奪衣婆ふり切り六文銭払い三途の川を渡るクルーズ

 振り返り賽の河原に目を遣れば小さな影が石を重ねる

 どこまでも聞いてたとおりに展開す死語の世界の既視感たるや

 舟を降り人の流れに加われば鬼が誘導する本会場

 赤鬼は角が一本青鬼は角が二本の裏切らぬこと

 行列の先に見えるはどこまでも絵で見たままの閻魔大王

 こんなにもベタなあの世があるものか頬をつねるが起きぬ 死んでる

つづく