2020年10月19日月曜日

布団の中でのこと

 夜中、異様な声で目が覚めた。小さい女の子が慟哭しているような声。それが延々と続く。
 しかしいまどき、小さい女の子は夜中に慟哭しないだろう。ポルガは幼稚園くらいの頃、嫌な夢を見て夜中に目を覚まし、夢と現実の区別がつかなくて、しばらく大泣きしたことがあったが、そういう泣き方ではない。悲しくて泣いているのではない。慟哭だ。泣きつつも、立ち向かっている。そんな泣き方である。
 だから泣いているんじゃなくて、鳴いているんだろう、猫だろう、と思う。発情期というやつか、と寝転がりながら思う。しかし考えてみたら今は10月ではないか。猫が発情する時期ではない。とはいえ、猫が春先以外に発情してはいけないという法はない。絶対に勃起するような場面じゃないのに勃起することもある。そういう日ってあるよ。
 そんなわけで睡眠を妨害されたが、参ったな、という焦燥感はなかった。なぜなら、最近は7時間睡眠をきちんと取るようにしているからだ。本当にきちんと取る。6時間ほど寝られるようにベッドに入ることはない。ちゃんと7時間確保する。そうしたら寝起きも日中も如実に怠くなくなった。よくいわれる睡眠負債というものが貯まっていないのを実感する。長年の習慣か、6時間ほど寝たところで目が覚めることがよくあるのだが、それは起きなければならない時間の1時間前なので、それから布団の中で、寝ているとも寝ていないともない状態を過すのが気持ちいい。考えなければならないことが暮しの中にたくさんあって、それは得てして心をかき乱すのだけど、その1時間の半覚醒は、まどろみの中にあるので思考などぼやけてしまい、現実を超越している感じがある。そんな浮遊しているような早朝の不思議な1時間が、いまやけに愉しい。